IT中間管理職はオワコンなのか? / Will the Middle Manager Still Continue Existing as a Position or Career Track in the Future? |
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目次
本記事の前提
本記事は、IT技術者からIT中間管理職になる人(なった人)前提で書いています。また、社外の人とできるだけコミュニケーションしてきたつもりの私ですが、実務経験は1つのメーカーに勤務し続けています。そのため、本質的には企業家や転職した人の気持ちや実情は机上での理解になりますし、逆もまた然りと思います。
中間管理職はオワコンなのか?
巨大な業務を管理
サラリーマンである中間管理職のヒエラルキーを作ってコントロールすればいいのだ。巨大な組織をたった一人の人間が理解しきれるはずもないし、ましてや経営することは不可能だが、あらたに管理職の階級を導入することでそれが可能になった。
出典;ジョゼフ・L・バダラッコ著「ひるまないリーダー」(翔泳社)ISBN;978-4798136158
最近、日本の企業の伝統的なハイアラーキーの中核である中間管理職がなくなるよ、という情報があふれています。本当にそうでしょうか?ある意味、確かに”YES”だと思います。メーカーを中心に日本の技術アドバンテージはどんどんなくなり、ブルーカラーは海外展開やAI自動化などにより、社員で賄う必要が激減していますし、それは加速するでしょう。モノを作れば売れた時代はとっくに終焉を迎え、少数精鋭での選択と集中を繰り返し、そのアプローチに失敗している企業がたくさんあります。これだけ考えるとピラミッド型の会社組織は、スピード感を出し、組織の壁を越えるため、小規模でプロジェクト型の組織の集合体になり、M&Aなどの組織的統廃合を繰り返してマーケットに対応していくことになり、確かにそこには中間管理職の居場所はなさそうにみえます。
そしてダメオヤジはいなくなった
私は1つのメーカーでずっと勤めていますが、昔は課長職に、どう考えても年功序列だけで課長になった”ダメオヤジ”がいっぱいいました。課長補佐なども含めると職制の椅子は今とはくらべものにならないくらいあって、”何をやっているかわからないが窓際に座って偉そうにしているオジサン達”は各事業部にたくさんいて、それを許容するキャパシティが会社にもあったわけです。
但し、今は完全に淘汰されました。理由は上述で言わずもがな。
そして今、私の周りの課長と呼ばれる人達は少数精鋭のプレイング・マネージャー達です。
課長はプレイング・マネージャーではいけないのか?
課長はあくまで職制であり、管理をすることが本務、プレイング・マネージャーであってはいけない、という意見が多いです。中間管理職になってハイアラーキーのレイヤーが一段上がった以上、部下のコントロールをして、今まで以上にマスな活動をし、結果を出さなければなりません。
ただ、今の企業は、
- 大きい組織体の戦略はますます総花的になってきていて、現場はダイレクトに動けない
- それでも事業部、課など中間組織体は何らかのKGIとそれに対するコミットメントを提示、達成しなければいけない
- 事業部や会社を跨いだ活動、プロジェクトが増えてきて、セクショナリズムが進み、課長クラスの”結合ポイント”、”潤滑油”が必要
- 結局、現場と経営層の距離は遠く、経営層にわかる言葉、承認できる言葉で語る”ミッションの通訳者”が必要
という状況です。だから、私はハイアラーキーのど真ん中にプレイング・マネージャーとしての中間管理職が必要だと思うのです。
意義あるプロジェクト
今や才能ある人々にとって、従来の社長やミッションステートメントはほとんど意味がないことを示唆している点だ。
出典;ジョゼフ・L・バダラッコ著「ひるまないリーダー」(翔泳社)ISBN;978-4798136158
中間管理職に臨むスタンス
そんな課長職になるときのスタンスですが、
- 「会社方針、戦略に沿って仕事をする」という人
- 「経営層の老害には物申しても仕事をする」という人
という2つのタイプの人がいたら、課長になれるのは前者の方だけですよね。後者は優秀でも会社の活躍は限られます。。給料がよければ我慢してもいいですが、少しでも会社がブラックだったりしたら、優秀な人はさっさと転職、起業すべきでしょう。
ただ、「私は会社の方針に染まりました。陶酔しています。」という人たちだけで課長職は構成されていません。大抵は”腹に一物”もった人たちです。私もそうです。
別記事”チーム力を発揮する”サーバント・リーダーシップ”~IT中間管理職のイマドキ・リーダーシップ・スタイル“の中で社長が社員のために働いているという関係、社員がカルト的に会社に陶酔しているという状況が理想的と書きましたが、それはあくまで理想で、現実にはなかなかあり得ません。
平社員から中間管理職にキャリアアップするときのモチベーションは以下のようなものだと思います。
- やるからには上のポジションを狙っていく
- 転職、起業のパワー、リスクを考えると今の組織でのキャリアアップの方がメリットがある
- IT技術者だったので、技術者マインドは持ったままスコープを広げたい
参考;IT技術者からIT中間管理職へのキャリアアップ
そうなるとモチベーションとキャリアアップの建前にはギャップがあることになります。本当に良い戦略や経営方針には乗って良いと思いますが、総花的なものや抽象的なスローガンには、陶酔する必要は全くありません。とはいえ、キャリアアップのためには「私は会社の戦略、方針を理解、同調し、これに対して結果をコミットします」というアピールをしなければ、自分のポジションを上げることはできません。「調整の上手いやつばかり出世する」と言われる所以です。
ミッションステートメントの画一化、陳腐化
総花的になりすぎたミッションステートメントは懐疑や否定的な感情を引き起こす。大企業のCEOですら同じ感想をもつこともある。
出典;ジョゼフ・L・バダラッコ著「ひるまないリーダー」(翔泳社)ISBN;978-4798136158
腹に一物もって中間管理職になろう
自分の仕事だから自分のやりたいことをやりたいですよね。IT技術者上がりなら、技術にやっぱり拘りたいなどの信念もあるはずです。
- “やるべきビジネス”、”やりたいビジネス”をやりたい
- 今まで以上にスコープ(人・モノ・カネ)の大きい仕事をやりたい
- IT技術者の経験(技術、現場知識、PMノウハウなど)を活かしたい
こういったポイントが、仕事の目的だったり、モチベーションだったりする訳です。しかしながら、
- たとえ総花的なものでも、全社戦略や方針に従う、という上層部へのアピール
- 上層部が理解或いは受け入れられるような現場状況の報告
- 戦略に則った自部門の達成目標のコミットメント
といったことを前面に出して、中間管理職を務めなければいけません。これができない人は管理職へのキャリアアップではなく、今のポジションでどう生きるかを考えるか、技術者の権威として社内で飛び抜けた存在を目指す、或いは、転職、起業を考えるべきだと思います。ただ、現状に甘んじている人が10年後も仕事があるかどうかは疑問です。
また、このときのキー・メソッドはロジカルシン・キングです。「ロジカル・シンキングなんかいらん」と言っている人もいますが、私は必要なケースもあると思います。老害...じゃなくて経営層に説明するときは、説明のフレームワークが必要だし、グローバルで文化や考え方が異なる人たちと話すとき、ガイドラインにもなります。ロジカル・シンキングがなければ説明ができない、という状態はまずいと思いますが、コミュニケーション・メソッドの一つとして使えば良いと思います。勘違いしやすいのが、のべつ幕なしにいつも説明にロジカル・シンキングを使ってしまうことです。無駄な労力を介さずに会話できる人たちとは端的にポイントだけ会話すれば良いです。大きい組織や異なる文化とコミュニケーションするときに使える場合もあるメソッドである、ということを念頭おいて使いましょう。
参考;IT中間管理職にとってのロジカル・シンキング
参考;IT中間管理職が実践してきたロジカル・シンキングとは
自分の考えやメソッドは別できちんと持っていれば良いだけです。つまりは、会社の方針や組織に乗りつつも”腹に一物”もって、やりたいことをやれるキャリアパスを見つけていくということです。
ブラック企業だから一目散に逃げるケースも多いとは思いますが、起業しなくても新しいビジネスができる会社はまだまだあるし、転職しなくてもジョブチェンジ(社内FA制度など)したり、マネジメント・パワーを使って大きいビジネスをしたりできる会社もあると思いますよ。私は10年後の社会を語れるほど博学ではありませんが、どんなビジネスを成すにせよ、ピラミッド型のハイアラーキー組織はあり、そこに中間管理職は必要です。要求されるスキルセットが変わったり、高度化したりしても、無くなることはないと考えています。
まとめ
中間管理職は残ります。但し、形を変えて。
- プレイング・マネージャーもできる実力者しか残れない
- 組織、会社の壁を越えられる調整能力が必要
- 総花的でも会社の方針に従う、というアピールと、目標のコミットは必要
- “自分のやりたいこと”は腹に一物をもってやっていく
- 会社との会話や、組織の多様化に対してロジカル・シンキングは有効なことがある
あくまで上記の事がやれる土壌を持っている組織での話です。ブラック企業からは早々に撤退するよう、見極めましょう。
– 14th Sep, 2016 / the 1st edition
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