IT技術者からIT中間管理職へのキャリアアップ / Career Progression From an IT Engineer to an IT Middle Manager. |
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目次
技術者上がりは中間管理職に向いていないのか
そもそも中間管理職が今の企業に必要なのか、という話もあるようですが、ここではほとんどのIT中間管理職が経るであろうキャリアパスである”IT技術者からIT中間管理職になる”という点について考えてみたいと思います。
IT技術スキルとマネジメントスキルは違う?~技術者からみた管理職
IT技術スキルとマネジメントスキルは間違いなく違います。いくら美しいコードが書けても、コマンドのオプションを詳細に知っていても、効率の良いSQLが組めても、チームをリードすることはできません。しかしながら、どうしても技術者としての想いはあり、
- 技術を極めたい、というエンジニア魂
- 自分がやりたかったことと異なるという違和感
- 煩わしい仕事という認識の方向性の違い
という視線=技術者マインドで管理職や営業、企画職を見てしまうのではないでしょうか。「畑違いだなぁ」「自分には向いてないなぁ」「面倒だな」という感覚で技術職に留まっている人が多いように思います。
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技術者として極めるのか?~IT技術者の選択肢
雇われIT技術者として経験と積み上げていくと、望む望まないに関係せず、優秀なエンジニア(あるいは社員)として優秀な人には管理者へのキャリアパスが示されます。ここで管理者への道を選ぶのかどうかが会社人生の後半戦をどう過ごすかを大きく左右します。但し、ブラック企業に見切りをつけるとか、会社の枠は自分には小さすぎるとか、そこそこ働いてサラリーがもらえればいいとか、色々考えがある人もいると思います。(そういう人はこの記事を読んでないと思いますが)
すると、選択肢は4つです。
- 管理職にキャリアアップする
- 社内で技術を極める
- 社外で技術を極める
- アベレージ・エンジニアの道を歩む
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もし、あなたがIT技術者として、ある程度の規模の組織(企業)にいるエンジニアだとして、やおらこれからキャリアパスを考えるなら、今いる組織内での”管理者へのキャリアアップ”か”社内で技術を極めるか”の二択だと思います。企業に厳しい時代ではありますが、あなたをそこまで育てた素地がある組織ですから、
- 人、モノ、金を今までのポジション以上に活用できる
- より大きなチームに参加、あるいはリードして大きな結果を出せる
というリソースがあり、ハイアラーキーの中で一段上の活躍ができるでしょう。但し、階段を1つ上ることで権限もつきますが、コミットメントの責任や、管理者としての責務を負うリスクも抱える覚悟も必要です。
また、技術を突き詰めるとしても、社内だけでなく社外でも権威となるくらいのダントツさがなければ技術者として一段上に行くことはできません。「自分は管理者が向いていないから」だけでは選べない選択肢です。
或いはもし、エグゼクティブへの昇格や起業や転職(ジョブホップ)を考えているなら、
- プレゼン、アピール、根回しのスキル
- 勉強会(社外)への参加
- 信頼口座の貯蓄
といった活動を元々当然のこととしてやっている人たちですね。IT技術者からIT中間管理職になる人とは少し違います。また、仕事第一ではない生き方も私はありだと思いますし、そこそこで組織に参加していこう、というならそれも選択肢なのでしょう。
IT技術者からIT中間管理職へのキャリアパス~経験を活かして
そうなると、組織内で活動していくためには、
- 中間管理職へジョブチェンジ
- シニアエンジニアへのステップアップ
の二択になります。どちらも椅子取りゲームの椅子はどんどん少なくなってきていて、厳しいポジションですが、やりがいのあるポジションだと私は思います。ただ、IT技術に基づくシステム、サービスはもはや”技術だけのチーム”、”ビジネスだけのチーム”では成り立たなくなってきています。戦略もビジネスもITがわかっているビジネスパーソンが作り出していく時代です。やはりモノ作りの世界なのです。
IT技術者は
- ITを知っている:困難なIT開発プロジェクトに参加しやり遂げてきた経験
- ビジネスを知っている:システム構築のためにビジネスの現場に直接関わってきた経験
という知見を持っています。
さらに”技術者マインド”をもっていれば、IT技術の中でも得意な領域(コーディング、セキュリテイなど)、ビジネスでも得意な領域(生産管理、CRMなど)を得意分野=”尖ったスキル”として持っているはずです。これを武器として技術者マインドを活かせます。そうなるとシニアエンジニアより中間管理職の方がやれることのスコープが広いとは思いませんか。
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どこがジョブチェンジの分水嶺なのか~IT中間管理職の3つの適性
ITがわかっているビジネスパーソンが必要な時代にIT技術者の経験が活かせるとしても、そこに人生をかける意義があるのでしょうか。おいそれと技術者マインドを管理者マインドに変えることができるのでしょうか。以下の3つに当てはまるIT技術者はIT中間管理職の適性があると思います。
人間に興味があるかどうか
雄弁で論客である必要はありません。逆に少し”口が立たない”くらいの方が部下は話しやすいと思います。ただ、”人とできれば話したくない”とか”人とかかわるのが嫌い”とか”コードは嘘をつかない”とか考えている人が管理職になれるとは思いませんね。ここは方法論ではなく、純粋に適正で、合わない人は技術を突き詰める人生を歩むべきだと思います。でも、技術者としての経験を活かして、ビジネス・システムというモノ作りをする、と考えると「人ともう少し関わってみよう」とは思いませんか。
リーダーシップを持てるかどうか
組織ハイアラーキーのレイヤーを一段上がる訳ですから、チームプレイだけでなくリーダーシップの発揮が必要になります。もちろん、適正はあると思いますが、実践されてきた方法論も多いです。ロジカル・シンキングやファシリテーション、リーダーシップ・メソッドを吸収することはIT中間管理職にステップアップしたいIT技術者にとって必須ですが、習得しやすいものではないかと思います。
参考;IT中間管理職にとってのロジカル・シンキング
参考;IT中間管理職のリーダーシップ
マインドチェンジできるかどうか
IT中間管理職になると、やれることのスコープは広がりますが、自分で直接やることは減ります。技術者マインドから管理者マインドになったときに一番変えなくてはいけないポイントです。
- 人に任せることができる;テレゲーションというメソッド
デレゲーション:他の人に仕事を任せること
自分で時間を投入する場合は「効率」を考え、人に任せる場合「効果」を考えるべきである。
出典;スティーブン・R. コヴィー著「7つの習慣-成功には原則があった!」(キングベアー出版)ISBN;978-4906638017 - 技術者が嫌がる調整を率先してやる;サーバント・リーダーシップというメソッド
参考;チーム力を発揮する”サーバント・リーダーシップ”~IT中間管理職のイマドキ・リーダーシップ・スタイル - 技術的ではなくビジネス的な成果を追及する:管理者マインドになってもモノ作りの本質は変わらない、という信念と視点
私の経験、知見から~”俺なりのキャリアアップ”
”尖ったスキル”を持とう
”得意分野があるかどうか”はとても重要なポイントです。私は”来た仕事は何でもやってみる”の精神でチャレンジし、生産管理システムの構築や、海外でのシステム開発、大規模プロジェクト・マネジメントなどに挑み、スキルを実践でモノにしてきました。生産管理システムを担当したときは本当に大変でしたが、計画やその制御で生産効率が生き物のように目に見えて変わるビジネス・システムを構築する達成感を味わいました。今でも私のモチベーションの根幹で、スキルセットのコアの部分だと思います。中間管理職になる、ならないに関わらず、ビジネススキル、調整能力、コーディング能力、セキュリティ知識、何でもいいので得意分野をもつべきです。それがあなたの武器です。
人への興味を持とう
私はどちらかというと無口な方です。人との会話は得意ではありません。しかし、会話が嫌いな訳でなく、飲み会なども幹事を買って出る方でした。「いい酒を飲まないと、いい仕事はできない」が持論です。会社付き合いで飲み会は強制だなどと言われて久しいですが、組織の上下左右の人たちと近所の居酒屋に行くことは本当に多いです。いつも楽しみにしているのが”話を聞くこと”。”話を聞かなくては”ではなく”話を聞きたい”と思って飲んできたことが色々なことの礎になっています。
技術者は型にはまったものが好き
私が中間管理職になったときは結構突然の示達で、あまり心構えや準備なく中間管理職になりました。その時に考えたのが自分の尖ったスキルであるプロジェクト・マネジメントでした。組織運営にもプロジェクト・マネジメント・スキルが使えると考え、実際、有効活用してチームをリードすることができました。IT技術者からIT中間管理職になるときにはPMBOKなどのフレームワークはとても有効だと思います。”型にはまったものが好き”、”方法論が好き”な技術者にはやりやすいアプローチではないでしょうか。
技術に走らない技術者もいる
私は社会人になってから、ずっとIT部門に所属していましたが、技術部門にいながら調整、資料、プレゼンで生き抜いている技術者(?)もいました。技術からあえて距離をおき、技術者としての成果を出そうとするタイプです。IT中間管理職よりは上のエグゼクティブや、起業を目指している人たちもやはりいます。技術者マインドでは生きてない人達なので、マインドチェンジは容易だと思います。サラリーマンとして野心がないのも物足りないとは思いますが、生粋の技術者マインドを持っている人とは違う世界の人たちですね。
まとめ
IT中間管理職には”経験を積んできたスキルを活かして、より大きなスコープでのモノ作りをする”という観点で、技術者マインドをベースにしたキャリアアップができます。但し、それは延長線上ではなく、管理職マインドへのマインドチェンジも必要です。方法論がある領域もありますから、確実にスキルアップ=キャリアアップする部分と、管理職マインドで乗り越えていく部分を意識してIT中間管理職をこなしましょう。技術者だから管理職になりにくいのではなく、技術者だからこそやれる領域はあり、今後のビジネス・パーソンは戦略もビジネスもITがわかっている人が作り出していきます。モノ作りは続けられるのです。
参考;IT中間管理職のリーダーシップ
参考;IT中間管理職のマインドセット
– 2nd Sep, 2016 / the 1st edition
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